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『アタシたち、友達決定ね』


あの黄昏時の、美濃珠理の言葉は、それから数日たっても脳内から消えることはなかった。

むしろ、それはわたしの中で、どんどん大きなものになってきている。

と、いうのも…。



「ちょっとめご〜!聞いてよッ!」

「うわ、出た」



この美しすぎる長身男、1日に何度もわたしのクラス・A組まで足を運んでくるのだ。


「ねぇ、めご。ミノくん、また来てる」

「いいっ、ほっといてっ」


今までで唯一、仲良くなった女子と言える、三河 瀬名 (みかわ せな) の少し心配そうな声を遮って、ひたすら下を向いていた。


ただでさえ目立つ美濃 珠理。

それなのに、あんなテンションで、クラスの中では地味ポジションにいるわたしに声をかけてくるなんて、クラスメイトに変な目で見られないわけがないじゃないか。


瀬名が言う「ミノくん」は、わたしが通う鎌倉東高校の中での、美濃珠理のあだ名だ。

きっと、今まであんな目立つ奴と話したことのない人間なんて、わたしくらいなのだろう。


「ちょっとめご、聞いてるのっ?!」

「…!」


ジロジロと、視線を向けられる中、このオネェはそんなの気にもせずにわたしの顔を覗き込む。


「…ちょっと、なんなの。これからお昼食べるんだけど」

「なによぅ、冷たいわねぇ。この間はあんなにアタシに心許してくれたのに〜!」

「だれがいつアンタに心を許した」


まったく、変な人に付きまとわれるようになってしまった。

これも全部、あの黄昏時に、わたしが我慢もせずこの人の前でわんわんと泣いてしまったからなのかもしれない。