「…あれはね、俺が作ったやつだったんだ。でもわけがあって、それを言えないでいた。でも…」



心臓が、ぎゅっと、しまる。



「美味しいって笑っているめごを、今でも覚えてる。この上ない笑顔で、俺の作ったもので喜んでくれためごのことを、俺は…」


「…っ」



「——俺は、あの時からずっと、好きだったんだ」




太陽が、少しずつ少しずつ姿を消して。

オレンジ色の空気が、少しずつ紫に染まっていく。

その中に、珠理の真剣な顔が浮かんでいて、わたしはその顔から、目を離せなかった。



…恥ずかしいとか、そんな感情じゃない。



——あぁ、やっと繋がった。


…そんな、感情。あまりにも感動してしまったのか、鼻の奥が、ツンと痛い。




「…めごが彼氏と楽しそうにしてる姿とか、彼氏のことで泣いている姿とか、全部見てきた。だから、夏に会った時は、もう無意識に手を差し伸べていた。泣いてるめごを見て、今度は俺が助けたいって思った」

「…っ」


「——めごのことを、また、笑わせてあげたかった」




…珠理が、あまりにもやさしい声でそんなことを言うもんだから、気づかないうちに、涙が一粒溢れ落ちていた。


でも、何も言えなかった。


だって、わたしは知らなかったから。
珠理が、そんな想いでずっとわたしのことを見ていてくれたなんて、知らなかったから。


「…っ、」


そっか、そうだったんだ。だから珠理はいつも、わたしのことをあんなに大切にしてくれていたんだ。

高校で出会う前、夏に出会う前から、ずっと。

中学生の頃から、ずっと珠理は、わたしのことを好きでいてくれたんだ。



…そんなの、今日の今日まで、知らなかったよ。


珠理。