「ていうか、こんなところで何をしているの?具合は?大丈夫なの?」

「…っあ、えっと…」


駆け寄ってきた美濃珠理に、何も言えなくなってしまったわたし。

…リョウちゃんにあんなことされて、追い出されたなんて、知られたくない。まだ、わたしの、わたしだけのヒミツなのに。




「何か、あったの?電話かけてきたの、アンタでしょう?」

「…っ」



どうしたんだろう。何も言えない。

なんでもないです、大丈夫ですって、さっきみたいに言えばいいんだ。アナタには関係ないから、放っておいてって、言えばいいんだ。


…そう、言えばいいんだよ、めご。


これまでだって、自分の胸だけに、しまってきたでしょう?





「…アンタ、今すごく、泣きたい顔してる」

「————…っ」






ヒミツは、完璧なはずだった。

どれだけ文句を言われようが、たたかれようが、こわいことを言われようが、わたしは何ともなかった。

今までだって、普通に生活してきた。


…リョウちゃんとの、これからに期待をしながら。



…だけど、今、わたしはどうして泣いているんだろう。


今日たまたま会った、たまたま同じ学校の人に、どうしてわたしは、こんな顔を向けることができているんだろう。



…この時は本当に、


本当に、その理由が分からなかった。