「あ…うん。そう。この間、リョウちゃんと別れた後に…、ハニーブロッサムにいたら、珠理が学校から帰ってきて…」
…近海くんは、わたしがリョウちゃんにフラれてしまったこと、知ってるのかな。知ってるよね、珠理から聞いてるよね。
「ふうん、そうなんだ。珠理、めごちゃん見た瞬間、飛んできたでしょ。ちゃんと、話聞いてもらえた?」
「え……、あ、うん…」
近海くんは、わたしがうなずいたのを見ると、安心したように笑った。
…そうだ、この人にも、リョウちゃんのことで心配かけていたこと、あったな。
リョウちゃんに何かされてんじゃないのって、聞かれたことあったな。
「…わたしは、少しずつ、元気になってる。珠理がわたしの気を紛らわそうと必死になってくれてる気がして、安心するからかも」
「…ん、アイツなら、そーしそうだよね」
「うん…、いつもそう」
いつもいつも、やさしい。というか、珠理も近海くんも、やさしい。もっと言えば、茶々ちゃんだって、やさしいと思う。
わたしは、いい人たちと、友達になれたと思う。
「…珠理はね、見たとおり、すげーいいヤツなんだよ。ただ、結構あれで、背負い込む癖がついてるとこあるから。めごちゃんも、アイツが甘えてきたら、助けてやってね」
「うん、もちろん。とりあえず今日は様子見てくるよ。オジサンもいるから、大丈夫だと思うけど」
「おう、よろしく。あ、でもこれから行くならお店はもう閉まってるかもな。裏口に、家の玄関があるから、そこのインターホンを押すといいよ」
「そうなんだ…!ありがとう!」
近海くんに、ばいばいと手を振って、学校を出た。
今日1日珠理がいなかったことが、なんだか変な感じ。
いつも、1日に1回は会うようになっていたから。



