「あ…あの、近海くん」
「うん?」
…電話で、確認するのもいいけど、でも。
「えっと…、珠理に届けるプリントとかないかな。わたし、この後ハニーブロッサムに寄って、少し様子を見てこようかなって…思ってて…」
「——…」
直接、確認した方がサッと済ませられるよね。何か持っていくものあるなら、ついでに持っていけるし。電話だと、寝込んでたら出るのもつらいだろうし。
…でも、明日の予定は確認しておきたいし。これでいい、うん。何もおかしいことはないはず。
なぜか少しだけ、近海くんにそのことを伝えるのがドキドキしたけれど、彼はわたしの言葉を聞いた瞬間、少し目を見開いて、その後吹き出した。
「ふ…ふふっ」
「え!?なんで笑うの!?」
わたし、何かおかしいこと言った?やっぱり、クラスメイトでもないのに、変なお願いだった?
「…ふふ、や、ごめん。なんかめごちゃんがすごい必死だから、おかしくて」
「えっ?必死じゃないよ…!」
そんなつもりなかった。そんなに、パンケーキ食べたい欲が態度に出てしまっていたのだろうか。だとしたら、恥ずかしさ極まりない。
「ふ…っ。うん、分かった。じゃあ、ちょうど預かってた課題もあるから、持ってってくれる?俺より、めごちゃんが行くほうが、珠理もきっと喜ぶと思うよ」
「……あ…、うん…」
近海くんは、にっこりと笑うと、そのまま自分の席に戻って、机の中のファイルからプリントを数枚取り出してきた。
配られた課題。それから、学年通信。わたしはそれを受け取って、自分が持っていたファイルにしまった。
「…じゃあ、お預かりします」
「うん、よろしく。ていうかめごちゃん、珠理の家がハニーブロッサムってこと、知ってんだね」
「あ…」
廊下に出てきた近海くんが、少しだけ小声になって聞いてきた。



