ヒミツにふれて、ふれさせて。



・・・


珠理とパンケーキを食べに行こうと約束した日は、屋上で話が出た時から、2週間が経過しようとしていた時だった。

結構前から目星をつけていた分、そこに行くことは楽しみにしていたし、手帳にも何気なく記していた。

だから、その約束の日が次の日に控えたある朝、近海くんに告げられた言葉が、耳に刺さったんだ。


「——え? 熱で休み?」


思わず、眉間にシワを寄せてしまっていたと思う。きっと、ものすごい顔をしていたに違いない。


「そうなんだよね。なんか昨日の夜から熱出ちゃったんだって」

「………」


…あのオネェ野郎。なんでこんな日に熱なんか。


でも、確かにあれからもクシャミは時々していたし、鼻水もズルズル、一昨日くらいからはマスクも着用して学校に来ていた。

怪しいなあと思っていたけれど、まさか本当に倒れるまで悪化するとは。


「…熱、どれくらいあるのかな」

「さあ、今日は分かんねーけど、昨日電話かかって来たときは微熱程度って言ってたよ。アイツ、毎年この時期は寒さに負けて風邪引くんだよね」

「…」


なんだそれ、弱すぎかよ。
寒さに負けるくらいだったらカーディガン貸すなよ。絶対アレが元の原因だよね。まったく。


「そっかあ」


…明日は、ナシにした方がよさそうかな。せっかく行けそうだなって楽しみだったけれど、あのオネェが倒れてしまってんじゃ意味ないし。

元はと言えば、アイツが誘ったんだし。
それに、風邪ひいてたら、美味しいパンケーキの味なんて分かるわけないもんね。