困ったように珠理の方を見ていたんだと思う。それを感じ取ったのか、珠理はまた困ったように眉毛を下げて笑う。
「そっか、どこかあったなら、連れてってあげようと思ったんだけど」
「…わたしを?なんで?」
「なんでって…。まぁ、ちょっとでも楽しいって思えるようにしたいって思ったからかな」
ただの自己満足なのかもしれないけどね。…珠理はそういってもう一度笑った。
珠理のこういうところを嫌いじゃないって思えるのは、わたし自身が周りの人にやさしくされることが嫌いじゃないせい。
わたしが甘えられる人と一緒にいることが心地いいからか、周りにはこんな風にやさしさを与えてくれる人が集まってくれているように思う。
…リョウちゃんも、その1人だった。
甘やかされるのが嬉しいなんて、ホント、子どもだなって思う。
「あっ…!じゃ、じゃあさ」
「ん?」
お店とか、観光地とか、そういう “行きたいところ” はないけれど。
ずっと、ずっと頭の中にいれておいた情報があるのを思い出した。
「こ、ここ…!ここに行きたい…!」
スマホの画面を開いて、今まで気になったお店のURLをブックマークしておいたページを開く。
青くなっている文字を押すと、さらに開かれるページ。ふわりと浮かび上がった画面には、色彩豊かなパンケーキが映し出された。
「パンケーキ?なにこれ、すっごく美味しそう…!」
それを見て、キラキラと目を輝かせる珠理。
…うん、きっと、甘いもの好きの珠理が見たら、そーいう顔をするって分かってた。
「わたしの家の…長谷駅から歩いて5分くらいのところにあるパンケーキ屋さんらしいの。すぐ近くにあるんだけど、まだ行ったことなくて」
ここなら、近場だし珠理も行きやすいかな?
…そう聞くと、珠理はにっこりと笑って、こたえてくれた。



