「そっか。じゃあわたしからの質問はこれで終わり。もう3つ使っちゃった」
空気を変えようと、精一杯明るい声を出した。それに珠理は笑ってくれて、「じゃあ次はアタシの番」なんて言ってくる。
いつの間にか、繋がれていた小指は離れていた。わたしが離したのか、珠理が離したのかは分からないけれど、昼休みも終盤だからちょうど良かった。
お弁当を食べながら話さないと、間に合わなくなってしまう。
「めご、最近行きたいなって思っているところとか、どこかあったりする?」
珠理が、最後の卵焼きのカケラを口の中に放り込みながら話す。珠理からの、今日2つめの質問だ。
「行きたいなって思っているところ?」
「そうそう。どこでもいいの、遊びに行きたいなーみたいなところ」
「えええ〜?」
そんなところあるだろうか。考えを巡らせてみる。
わたしは、生まれた時から鎌倉市に住んでいるけれど、これでも生まれた土地が大好きな人間だから、遊びに行くといってもあまり遠出はしない。
…最近行った遠いところでも…リョウちゃんと行った江ノ島だし…。
「んー…、どこだろうね」
本当に思い浮かばなくて、目の前のお弁当箱だけを見つめる。最近、行ってみたいと思ったところ…やっぱり、ないなあ。
「…あんまり、思い浮かばないかも」
お店見て回るのは好きだけど、気になる雑貨店とかも今のところは入って来てないし…。だからって、ここあたりの観光地なんて、人がワンサカいて行きたいとあまり思わないし。
第一、地元なのにわざわざ観光になんか行かないし。



