「…なに、めご、寒いの?」
「…っ」
ほんとに、このオネェは気づかなくていいことに気づくというかなんというか。今ポソッと呟いただけなのに。聴こえてしまっていたのかな。
「…ちょっとね。下にカーディガン置いてきてしまったから、バカだったなあって思ってただけ。見た目より寒くないから大丈夫」
「…」
珠理が顔を傾けてわたしを見ている。ウィンナーを挟んだ箸も止まってる。だから!寒くないんだってば!そんなに見ないでよー。
でも、そんな時も、風はヒュウっと、わたしの身体を震わせようと言わんばかりの冷たさで攻撃をする。
太陽も出ているから、カーディガンさえあれば大した寒さじゃないはずなんだけど…もう本当、後悔だ。二度とこんな失敗はしたくない。
「…ほら」
カチャカチャと音がして、お弁当を置く音がしたかと思うと。珠理はブレザーを脱いで、カーディガンのボタンを素早くとって、それをわたしにかぶせてくれた。
「…え。これ…」
「いーから。羽織っておきなさい。風邪引いちゃうから」
肩から、毛布のような温かさに包まれる。ブカブカとしたそれは、昨日も感じた、珠理のにおいがした。
「え、い、いいよ…珠理が風邪引く…」
「アタシはブレザーもあるからいいのよ。アンタはブラウス1枚でしょ。いーから羽織るの」
「…」
少しふくれた頰。笑顔をなくして、わたしに有無を言わせないその顔は、迫力がある。でも、美しい。本当にどこかの芸術家がつくった人形なのではないかと思ってしまう。
本当に同じ人間?
「…ありがとう」
寒かったから、本当はうれしかった。
さっきまで珠理が着ていたから、ホカホカする。大きいホッカイロみたいだ。
珠理はしばらく、じっとわたしの様子を伺っていたけれど、その後ニッコリと笑って、大きな手のひらを伸ばしてきた。
少しだけ、ビクッと震える身体。でも、その影はふわりと頭の上に乗っかった。



