ヒミツにふれて、ふれさせて。



「おーい、しゅーくん。学校終わったの?」


片付けをしようと、カバンを整理して立ち上がろうとした。

その時だった。


「ちょっとぉ。そのしゅーくんって呼び名やめてって何度言えば分かるの〜?」



……………………え。



「あはは、ごめんごめん。珠理。ちょっとここのテーブルの後片付け頼みたいんだけどさ」

「え〜?なに、また残ったケーキ食べて…」




—————— 声も、出なかった。




思わず、持っていたカバンを下に落としてしまったし、身体は固まってしまったし、目も見開いてしまった。

だって、聞こえてきたその声と、裏口のテーブルに入ってきたその姿は、わたしのよく知っている人だったから。



「………………………めご、」

「——————…」





どうして、ここに珠理がいるの…?





「あれ、お前とめごちゃんがここで会うのって初めてなんだっけ?なんかすごく驚いているけど」

「………」


いや、初めてなんだっけ?って。初めても何も、どうしてこのオネェがわたしの大好きなハニーブロッサムにいるんですか?


「…めご、アンタ…」


え、だって、珠理は。

珠理は…


—— “あぁ、ハニーブロッサムね”


…そうか。そう言えば、ハニーブロッサムのこと、知ってる感じだった…。でも、え。まって。



「…めご、ちょっと来なさい」



思考が追いつかないうちに、引かれる手。強引に連れて行かれるわたしの身体。



「ちょっと、しゅーくん?!めごちゃんをどこに連れてくの!」

「少し出てくる!このお題はアタシのお小遣いから引き抜いておいて!」

「ええ〜〜?!」



遠くなっていく、オジサンの声。少し焦ったような困ったようなその声を聞きながら、わたしは突然現れた珠理に手を引かれて、その場を去ることになった。