オジサンの話は、時々難しすぎて、何を言っているのかよく分からなかったけれど、でも少しだけストンと胸の中に落ちて。
…少し、ほっとした。身体の力が抜けた。
「めごちゃんなら、大丈夫だよ。きっと前に進める」
「…そうかなあ」
「そーだよ。若いんだから、可能性は無限大だよ」
はははは、と、また豪快に笑った。なんだか、この人に「大丈夫だ」と言ってもらえたら、本当に大丈夫な気がするから不思議だ。
少し、話してみてよかったかもって思えてきた。
—— それからしばらくの間、わたしはオジサンと他愛のない話をして盛り上がった。
わたしを気遣ってか、リョウちゃんの話にはならなかったけれど、普段の学校のこととか、オジサンの学生時代の話とか、とにかくたくさん。
その度に、オジサンは「若いっていいなあ」と呟いていた。
・・・
気がつくと、時計の針は3時を指していた。
もう、2時間近く滞在している。出されたちくさんのケーキは、すべてわたしの胃袋の中へ押し込められていて、フルーツティーの入っていたグラスも空っぽ。
「はぁ、お腹いっぱいだぁ!」
「ははは、よかったよ。これでもかってくらい、食わせたからね」
幸せな時間だった。こんなにたくさんのケーキをモリモリ食べたのは、生まれて初めてだ。
誕生日だって、ショートケーキ1種類だけだし。本当に贅沢な時間だったなあ。
パンパンになったお腹をさすってオジサンと笑い合っていると。
———ガチャ。
裏口の出入り口が、開く音がした。
その音に反応して、オジサンは椅子を後ろに倒し、お店の裏口の方をみる。
「おっ?帰ったかな」
…帰った?お店の人?それとも、家族の人かな。
誰か帰ってきたなら、わたしもそろそろお暇した方がいい感じかな。



