「…っい、いやだ…!」
何かが、プツリと音を立てるように切れて。
「いやだ…!いやだ、いやだよ、リョウちゃん…!」
今までどこに隠れていたのかと思うほど、わたしからも大粒の涙が溢れてくる。
こんな感情、知らないというように、ドクドクと血液が身体中から溢れて、心臓に返っては、またそこから流れて、わたしのすべてを刺激していく。
…人って、大切なものを失いそうになると、こんな風になっちゃうのかな。
「なんで…なんでそんなこと言うの…?わたしは、リョウちゃんと一緒にいることが幸せだったのに…!」
ドン、ドン、と、周りの目を気にせずに、握りしめた手でリョウちゃんの胸を叩いた。
こんなもんじゃない、リョウちゃんから受けてきた苦しみは。でも、それでも、わたしの気持ちは1ミリも変わったことなんかなかったのに。
「どうして、そんなこと言うの…!」
分からない。だって、リョウちゃんとの恋を終わらせないためにわたしが我慢することの、何が間違っているというの。
そんなちっぽけな痛みなんて、これからもいくらだって受け止めていくのに。何度だって、泣くのに。それでも構わないのに。
「——めご、泣くな」
「…泣くよ…っ、泣くなって、そんなこと言うの、ずるいよ…」
確かに、今までわたしは何度も涙を流してきたよ。リョウちゃんには悪いけど、他の人の前で涙を流してしまったこともあったよ。
だけど、その時の痛みなんて、もう思い出せないくらいちっぽけで。
それよりも、リョウちゃんからの連絡を待っている間の痛みとか、今のこの瞬間の痛みの方が、何倍も何倍もくるしいんだよ。
「…わたしは、リョウちゃんが好きなの!好きだから一緒にいる、ただそれだけなんだよ…!」
「めご…、」
「何されたって構わないよ!だってリョウちゃんだもん、好きなんだもん、構わないよ…!」
何も、言葉が出てこない。もっと上手に伝えられれば、リョウちゃんは思い直してくれるかもしれないのに。それでも、こんなに単純な、子どもみたいな言葉しか出てこないんだ。
—— 行かないでほしい。
お願いだから、リョウちゃん。行かないでほしい。
これからも、ずっと、好きでいさせてほしい。



