少しだけ力を緩めて、わたしから離れるリョウちゃん。
名残惜しい、もっと、抱きしめていて欲しい。
好き、好きなんだよ、リョウちゃん。
「…めご、」
リョウちゃんが伏せる目と、揺れる睫毛に、なんだか泣きそうになった。鼻の頭がツンと痛い。
いやだ、なんで、こんな…。
「———めご、別れようか」
…どうして、嫌なことって、コトが起きる前に、身体が感じ取ってしまうのだろう。
「…っえ…?」
それでも、やっぱり伝えられた言葉は予想外で、驚いて、びっくりで、身体全部に重りが乗っかったように痛かった。
「…ずっと、考えてた。俺が、変わってしまうことで、お前の笑顔がどんどん消えていくのを見て、俺は…」
何を言われているのか分からない。何を言っているの?リョウちゃん。
「お前を叩いてしまったり、泣かせてしまったり、もっとひどいことしたり…。そんなことしている自分が、もう…殺したくなるくらい、嫌で…」
「…リョウちゃ、」
「でも、止められないんだよ、どうしても。だから…」
ポタリポタリと、愛しい彼の目からは、キラキラと光る涙が溢れていた。それを覆い隠すように、その温かい大きな手のひらで顔を隠すリョウちゃん。
…その手、そんなとこに当てていないで。わたしの、わたしの頰に当てて欲しいのに。
「——めご、俺と別れてほしい」
そんな言葉が、欲しいわけじゃないのに。



