わたしが、リョウちゃんを好きになった瞬間はいつだろう。同じクラスになって、少しずつ仲良くなったって思っていたけど、わたしにも好きになったその一瞬があったのだろうか。
…リョウちゃんは、覚えてくれているんだな。嬉しいなあ。
サッカーしているリョウちゃんは好きだった。でも、それも、いつの間にか目で追っていることに気づいて、「あぁ、好きなんだ」って思ったのであって。
きっと、サッカーしている時だけではなくて、他の何気ない日常にいるリョウちゃんのことも好きになったんだろうな。
わたしは、小さな「すき」が、積もり積もって、カタチになっていったのかもしれないな。
「ふふ、ありがとう、リョウちゃん」
そういう気持ちを、大事にしていきたい。わたしたちの始まりはいつだったのか、どんな想いだったのか。
それを忘れなければ、きっとわたしたちは、これかも一緒にいれるよね。
ねぇ、リョウちゃん。
「…そう、その顔が、好きだよ」
次の瞬間、少し冷たくなっていた身体は、大きなものに覆い被されて、温かいものに包まれていた。
クッと、首のあたりが締まったかと思えば、そのまま、大きな手が頰に触れる。
…リョウちゃんの、こうやって少し強めに抱きしめるのも、すき。
ずっと、抱きしめててほしい。リョウちゃん。
「…その顔が、好きだったんだ、めご」
————— ?
「…リョウちゃん…?」
「…」
震える声で、ぐっとさらに抱きしめて、わたしの体温を、存在を確かめるように力を入れるリョウちゃん。
はぁ、と、首元にあたる息が熱くて、熱くて、火傷してしまいそうになるのに。



