「藤井なんかに可愛いって思われたって、なーんにも得しません」

「……普通、好きな人には可愛いって思われたいもんじゃないんですかー」

「……忘れろっつったよな?しばくぞ」

「でもさ、」

「もういい黙れ」

「嬉しかったよ、夏乃の気持ち。すげぇ……戸惑ったけど。ちゃんと俺なりに夏乃のことすげぇ考えた。夏乃のことは好きだけど……やっぱ、夏乃とは友達としてバカやって笑ってたいって思う」


背中越し、聞こえる藤井の少しだけ真面目な声に涙が出そうになる。


普段なーんにも考えてなさそうな藤井が、私のことちゃんと考えてくれたって……その言葉だけで報われた気がした。


気持ち伝えて良かったって思った。


そういうところが好き。
藤井、やっぱすごい好きだよ。

もう少し、藤井よりずっと男前の運命の人に出会う日まで、この気持ち引きずり倒させてね。


「藤井」

「ん?」

「ありがとうね」

「ま、俺レベルになるといい男すぎてそりゃ夏乃も惚れるわな!」

「明日の朝、藤井が目覚めませんように。安らかに眠り続けますように」

「おい!!!」



せっかく素直になってみたのに、やっぱりギャグに変えてくるあたり、最強に腹立たしいよ藤井。



だけど、藤井と帰るこの時間が、この景色が、私はやっぱり最高に好きだ。