「友達でいてよ。お願い。今まで通りでいいから、避けたりしないでよ」

「っ、」

「藤井のことは好きだけど、私達は友達の方がしっくり来るし、変に私に気遣って話す藤井とか気持ち悪くて調子狂うんだよね」

「夏乃……」

「だから、もう忘れて!お願い」



ヒューっと風が吹く。


私と藤井の間を吹き抜ける、生暖かくて夏の匂いを運ぶその風に乗って、私のモヤモヤした気持ちはどこかへ飛んで行ったような気がした。


「……おっしゃ、帰るか」

「うん」

「俺もう疲れたから、夏乃こぎな」

「は???途端に優しくないその対応何?」

「は???友達でいいんだろ?なら、遠慮はいらねぇだろーが」


分かってる。
これは藤井なりの優しさだってこと。


でも、1つ言わせて藤井。


「このクソ男が」

「おい!!お前、それ本心だろ!」

「さぁ?どうだろうね」

「俺はせっかくお前の為を思って……!」

「はぁ?私の為を思うなら藤井がこげよ」

「可愛くねぇ!!全然 可愛げがねぇ!!」



あぁ、これだこれ。
藤井からチャリを奪い取ってサドルに腰かければ、それを合図に藤井が後ろに跨った。