愛すべき、藤井。



やっぱり、うめが言うみたいに避けて通れるわけでもないし、授業が終わったら藤井に声かけよう。


『なんで迎えに来てくれないのよ』って。
なるべく意識してることがバレないように、いつも通り、平然を装って言おう。


そしたらきっと、藤井のことだから何かしらギャグぶちかまして来るに違いない。それが例えどんなにクソつまんないギャグでも、仕方ないから今回は夏乃様の海のように広い心で受け止めてあげる。


ほ〜ら、いつものアホな私たちの完成だ。

……なーんて、こんな上手く行ったらいいけど、そうも行かないのが現実だってことは薄々気づいてる。藤井はこんな時でも、やけに真剣にノートを取ってて、そんな横顔すらかっこよく見える私はもう、末期。



───あっ、


不意に藤井の机からコロコロと消しゴムが転がって、隣の席の波岡さんの机の下で止まった。


それに気付いた波岡さんが、自分の机の下へと手を伸ばして消しゴムを取ると、藤井に何かを伝えながら微笑んだ。


瞬間的に鼻の下が伸びきって、だらしない顔になった藤井は、波岡さんの手から消しゴムを受け取ると、同じく波岡さんへ何かを伝えて微笑む。


基本誰とでも仲良くなってしまう藤井に、今まで何度やきもきさせられたか分からない。