愛すべき、藤井。




すぐに先生が入ってきて、よく分からない外国語をペラペラと読み上げ始めた。

こりゃ眠気に襲われ始めるのも時間の問題だ。

私は日本人だから、英語はいいや。一生日本に住む予定だし、多分 学校を卒業さえしてしまえば使うことはない。


「Grandfather’s Letters───」


先生の言葉に耳を傾けつつ、無意識的に見つめてしまう藤井の背中。


廊下側から2列目の後ろから2番目の私の席からは、窓側から2列目の前から2番目の藤井の席が良く見える。

今日はまだ1度も話してないなー。
それどころか、声すら聞いてないや。


こんなの、藤井に出会ってから初めてだ。

中学3年生の夏休み明けに転校してきた藤井との出会いを私は全然覚えていないけど、藤井いわく私は転校してきた藤井に初めて話しかけた人らしい。


藤井がだいぶ変な時期に転校してきたのは両親の離婚が関係してるらしく、母さんに引き取られた藤井はお母さんの地元であるこの街に越してきたんだとか。

離婚と言っても、藤井の両親は円満離婚と言うやつで、今でも藤井は頻繁にお父さんとも会ってるみたい。


元々 隣町の中学に通ってた藤井は、この高校にはその頃の友達も沢山いて、常に友達に囲まれてる。


まぁ、最近はもっぱら神田くんが相棒だけどね。


私とうめと、神田くんと藤井。

私は4人でいつもあーでもない、こーでもないってバカな話に花咲かせてる時間が一番好き。