「で?その『ごめん』が影響して、今朝は一緒に登校しなかったわけ?」
そう、そこだようめ。
それなんだよ。
「それが、わかんないんだよなぁ。金曜日は『ごめん』に耐えかねて走って帰っちゃったから、チャリは藤井が乗って帰ったはずなんだよ」
だから、藤井が迎えに来てくれるはずだったんだけど……。
「じゃあ、藤井が来なくて、待ってて遅刻したってことだ」
「うん」
「健気だね〜」
「いや、健気っていうか……。それが当たり前だったんだもん、藤井と一緒に登校しない日なんてなかったし」
どうしようもない空虚感。
まさか、あんなアホ以外の何物でもない藤井と一緒に登校出来なかっただけで、こんなにも心にポッカリ穴が空いた感覚に陥るなんて、思っても見なかった。
「本人に聞いてみなよ」
「え??」
「だって、このまま避けて通れるわけでもあるまいし。本人に聞くのが一番じゃん?」
「な、なんて聞くのさ」
「それは自分で考えな」って言ううめの言葉と同時に
──キーンコーンカーンコーン
と、授業の予鈴がなった。
「じゃ、また後で」なんて呑気に手をヒラヒラと振って、自分の席へと戻っていくうめに軽く手を振り返せば、
雪崩のように教室に入ってきた人の中に、藤井と神田くんの姿を見つけて、グッと胸に何かがつかえたように呼吸が苦しくなる。


