「藤井……!それって、つまり」
『藤井がパン屋さんになったらお嫁に行ってあげてもいいよ』
この間、私が冗談めかして言ったあの言葉を、藤井がもし覚えててくれているんだとしたら、
『…………考えとく』
考えた結果の答えが、さっきの言葉なんだとしたら、嬉しすぎて、幸せすぎてどうしていいか分かんない。
藤井を想って泣いた日の悲しさなんて、たったこれだけの事で全部忘れてしまいそうなくらい。
「あー!!!もう、なし!今のナシ無理!」
「ナシはナシでーす!もう聞きました〜!藤井ってば、私のこと嫁に欲しいくらい好きだったとは知らなかったな〜」
それくらい、藤井に幸せをもらって満たされてる。
「うるせーな!悪ぃかよ」
「……フフッ、フヘヘヘ……」
「キモイ。普通に余裕でキモイ」
「……夏乃ちゃんをお嫁に欲しいくらい好きな藤井くんに、1ついいこと教えてあげようか?」
少しだけ空いていた藤井との距離を、ズイッと詰め寄った私に、藤井は一瞬驚いたみたいに目を見開いて、
それからすぐに「なんでしょう?」なんて少し眉を下げて不貞腐れたような、観念したような声で呟く。
そんな藤井を可愛いと思う私は、間違いなくイレギュラーだ。