藤井が戻ってくる前になんとかしたいのに、自分の力じゃ立花くんを退かすことが出来なくて、必死にもがく。
私に抱きつくように眠る立花くんを見たら、藤井はどう思うだろう?立花くんが寝ぼけて気付いたらこんな態勢になりました〜とか言って、
藤井は信じてくれるだろうか?
……あの単細胞のことだから、絶対に変に誤解してややこしくなると思うんだよね。
だからほんと、一刻も早く……
「お願いだから、どいてよ!ねぇ、立花くん!!!起きて?熱があるところ悪いけど、私の上から直ちにどいて!」
───タンタンタンタン
っ!!!
やばい、藤井が階段を上ってくる音がする。
「ね、ちょ!!立花くん!お願い!起きて!!起きてったら!!」
「ん〜……って、は?伊藤?」
「寝ぼけてないで早くどいて!!」
揺さぶるように立花くんを起こせば、やっとのことで重そうに瞼を開いた立花くんが、私を見つめて驚いたように目をパチくりさせた。
どうせ熱のせいで意識モウロウとしてて、なんでこうなったか覚えてないんでしょ!
話はあとだ!もう、藤井が来ちゃうの!お願いだから早くどいてくれ!!
心臓がやけにバクバクうるさい私をよそに、立花くんがダルそうに体を起こして、再び私の顔の両手に手をつく態勢になった瞬間、
───ガチャッ
……部屋のドアが静かに開いた。


