愛すべき、藤井。




***




駅にチャリを置いて電車に乗った私たちは、一駅隣で降りて近くに見つけたドラッグストアで買い物を済ませた。


今どきのドラッグストアは、薬品を取り揃えたほぼほぼスーパーと化していて、大体のものが手に入ってしまうんだから、よそに行く必要がない。



もちろん、新鮮な野菜や新鮮なお肉なんかはスーパーの方が良いんだろうけど。



───ガチャ



【もうすぐ着くよ】と送ったLINEに立花くんから【誰もいないから、勝手に入ってきて 部屋2階】とだけ返信が来たから、


人の家にインターホンを鳴らさずに入るのはすごく気が引けたけれど、

思い切ってドアを引いた。



途端に広がる、立花くんの匂い。
優しく香るこの匂いは、立花くんって言うよりは、立花くんの家の匂いなんだ。



「お邪魔しま〜す」

「ま〜す」



私に続いた藤井は、玄関に飾ってある可愛らしいクマさんの置物に触れながら「うわ、懐かしい〜」なんて言って、完全にあの頃を思い出している。




────コンコン

「立花くーん、入るよ!」

「……んー」


階段を上った私たちが【YUUYA】と書かれたプレートの掛かっているドアをノックすれば、中からダルそうな立花くんの声が聞こえて来た。