愛すべき、藤井。



こう見えて、計算高いんだから私。



「ったく、パン屋にでも住み込みでバイトでもしろよ」

「藤井がパン屋さんになったらお嫁に行ってあげてもいいよ」




「なんてね!」と付け足して笑えば、藤井も小さくフッと笑った。



チャリに乗っていると、無駄に風が吹き付けて来て寒い。吹き付ける風は容赦なく私の体温を奪っていくけど、


藤井の腰に回した腕は藤井の体温に触れて温かい。



そんな些細な瞬間に、また、好きだなって思う。



「…………考えとく」

「えっ?」

「パン屋」

「……っ」




うっそ……


どうせバッサリ『お前みたいな嫁いらねぇ』って言われるかと思ったのに……なのに『考えとく』って。しかも、チャリこいでて全然顔見えないけど、心なしか耳……赤くない?


え、照れてる?照れてんの?

……ちょっと、藤井。


何だよ、藤井!!!!(心の叫び)


そんなんじゃ、私にもちょっとは脈あるんじゃないかって、本当に勘違いしちゃうんだからね!!!