愛すべき、藤井。




***


「はぁ??」

「だから、今日は先に帰ってて!」

「ぜってぇやだ」



放課後、立花くんから頼み事をされているから先に帰って欲しいと伝えた私に、藤井はやだの一点張りで……。



「でも、立花くん1人じゃ心配だし」

「は?」

「……あー、もう!さっきからなんでそんなに怒ってんの?なら藤井も行く?!」

「……夏乃が行かないって選択肢がねぇなら、俺も行く」



そんな選択肢、あったら最初から行くなんて言ってない!!


そう言いたい気持ちをぐっと堪えて、そこまでして藤井がなんで私を立花くんのところへ行かせたくないのか考えた。


……でも、思いつくのはやっぱり、私に都合のいい理由ばっかりで。


「じゃあ一緒に行こう?買い物もしなきゃだけど、いい?」

「すげぇやだ」

「……だから私1人で行くってば!」

「そうじゃなくて、夏乃が立花のこと考えてんの……すげぇやだ」

「え……」

「ったく、行くぞ」

「あ、ちょっ!藤井??」



藤井の言葉にカァアッと熱をもつ頬。
火照りが治まらない。


私をおいて先に教室を出ていってしまった藤井を、慌てて追いかける私の心臓は、ドクドクとリズムを刻んでいる。