たどり着いた交差点。
少し手前を歩いていた夏乃を見つけた俺は、一瞬呼吸を忘れた。
まだ制服のままで、膝は丸見えで寒そうだし、手袋はしてねぇから寒そうだし。
1人ぼっちで、寒そうだ。
『……藤井?藤井が見える』
「あ?……ドッペルゲンガーじゃね?」
夏乃が俺を見つけて、俺の心臓はまたバクバク音を立て始める。
いつか壊れんじゃねぇのってくらい。
でも、それを合図に、驚いて立ち止まってしまった夏乃に代わって、俺は小走りで夏乃との距離をどんどん縮める。
『じゃあ藤井今すぐ交差点に来て』
「なんで?」
『ドッペルゲンガーを見たら死ぬって言うじゃん?』
「殺す気かよ」
「……っ」
目の前に夏乃がいる。
あんなにも当たり前だったこの光景。
それだけなのに、たったそれだけのことなのに。
俺を満たすには十分すぎた。
俺を真っ直ぐ見つめてすぐに涙ぐむ夏乃を、こんなにも愛しいと思うから。


