『会えません』
っ、
夏乃の言葉に、わかりやすくショックを受けてる自分。
「はぁ?なんでだよ」
『今会ったら、泣いちゃうかもしれません』
俺の質問に、泣いちゃうかもとか言い出す夏乃に、
あの日、俺に好きだって言いながら怒って、泣いて……走り去って行った夏乃が瞬時に脳裏を過ぎる。
「……どうしてですか?」
『……藤井のこと、好きすぎて苦しいからです』
───ドクンッ
胸が甘く疼く。
自分の知らない感覚に戸惑う。
こんなこと、今までなかった。
香織を好きだった時は、1度も感じたことがない……なんて表現したらいいのか分からない、温かい感情が胸をいっぱいにする。
「……なら、俺にも責任があるのでやっぱり会いたいです」
夏乃の返事も待たずに部屋を飛び出せば、リビングでテレビでも見ているらしい母さんの高笑いも無視して玄関を出た。
家の中とは違って、外の空気は冷たくて
上着も着ないで家を飛び出した自分の軽率さに、また1人で苦笑を零す。
電話の向こうでは、夏乃が俺の嫌いなところと題して長々と語っていて、
それを聞きながら、俺はどんどん体温が上昇した。だって、なんかそれってさ、


