愛すべき、藤井。



『……藤井の方こそ、心臓に悪いっつーの』

「は?なんで?」


照れたような、夏乃の声。
思えば、夏乃はいつもこんな風に、何かにつけてちょっとだけ強がりな言い方をしてたっけなぁ。


もしかして、そう言うの全部、俺に対する照れ隠しだった?



『藤井、ごめんね』

「は?なんで?」

『今日ね、香織ちゃんに会ったよ』

「は?なんで?」




夏乃が急に謝ったかと思えば、香織に会ったとか言うから……『は?なんで?』ばっか言っちまった俺がおかしかったのか、夏乃が電話越しに吹き出した。


どうせボキャブラリーが少ないとか言いたいんだろ?うるせぇ、余計なお世話だ!!


『多分……ばったり会った?のかな。ファミレスでさっきまでパフェ食べてたんだ〜』



いやいや、呑気にパフェとか食ってんじゃねえよ!香織とどうやって会った?知り合い?なわけねぇよな……。


香織のやつ、夏乃に変なこと言ってねぇよな?



「じゃあまだ外だろ?」

『うん、今帰りだよ?』

「……交差点まで出たら、会えたりする?」



"会いたい"ってたった4文字を言えずに、わざわざ長い文章を口にした俺の声は少し掠れていた。