愛すべき、藤井。




***



家に帰った俺は、そのまんまできたばかりの飯を食って、当たり前みたいに残業で遅い親父より先に一番風呂に入った。


髪も乾かさずにベッドにダイブして、


スマホで最新ラブソングとか流しながら、


考えるのは夏乃のこと。



「どーすっかな、これ」



夏乃の分ももらったクロワッサン。


話しかければ返事くらいしてくれるし、夏乃の大好きなクロワッサンだし。貰ってくれない……なんてことは、ないと思う。



ただ、どうせならこのクロワッサン使って仲直りできねぇかな〜……って。


こんなこと考えてる時点でダサいよなぁ。


謝ったって、何に対して謝ってんのか分かんないって言われて、逆に関係が悪化しかねない。


だからって開き直ってしまったら、もう俺達の関係は修復不可能な気がする。



「それだけは、やだ」



夏乃がいない毎日なんて、なんの意味もない。夏乃がいるから俺は笑ってて、夏乃がいるから楽しくて、夏乃がいるから腹立って、夏乃がいるから……



満たされてた。