「でも、いい機会なんじゃない?」

「いい機会って?」

「藤井にとって、伊藤がどんな存在なのか見つめ直すには、さ」

「そんなの、見つめ直さなくたって……」



夏乃は俺にとって、


『そばにいて当たり前』の存在だ。


だって中学から一緒なんだぞ?たかが2年ちょっとって言われるかもしれねぇけど、その2年ちょっとは俺の中で1番濃くて、どれも夏乃との思い出に溢れてる。


朝だって、昼だって、夜だって。

学校の行事だって、プライベートだって、思い出せる記憶の中には全部、俺を呼びながら楽しそうに笑う夏乃がいるんだから、



「大事に決まってんじゃん、アホかよ」

「……それは逃げてるよ、藤井。『大事』にも種類があるんだから、なんで『大事』なのか考えたら」

「……わっかんねぇ。なんだよ『大事』の種類とか」

「要はラブとライクの違いだよ。ぶっちゃけ藤井の中で伊藤はほんとに恋愛対象じゃねぇの?」

「……いや、それが……」

「え、なに?伊藤のことついに意識し始めた?」



ビックリしたと言わんばかりに目を見開いて俺を見る神田に、なぜか心臓がバクバクと加速する。