「思いのほか藤井に会いたかったっぽい」

「……だろうな」

「何よ、偉そうに」

「……良かった」

「なにが良かった?」

「……会いたいって思ってたのが、俺だけじゃなくて良かった」



ギュッてきつく私を抱きしめる。

ほんとにこれ藤井?って、顔をあげて確認しようとする私の後頭部を大きな手のひらで包んだ藤井が、再び自分の胸へと沈めるから、


顔を上げることは出来なかったけれど。



「ね、藤井」

「ん?」

「また一緒にいてもいい?」

「……いい?って言うか。またどこ行く気だよ。そろそろ首輪買おうかと思ってた」

「……え?首輪って、誰の?私の?」

「まつりのお下がりでいいなら、もうあるけど」

「マジトーンで言うのやめない?やだよ、首輪とかマジでやだよ?てか、藤井の犬とか死んでもやだよ」

「まつりに謝れよ」



久々なのに、全然変わらない。


きっと、藤井の傍にいるってこういうことだ。
安心して、温かくて、心地よくて、幸せで。


満たされる気がする。


私に足りてない全部を、藤井がくれる。

そんな感覚。


だけど、その代わり。
苦しくて、悲しくて、寂しくて、辛い。
そんな気持ちにもさせてくる、それが藤井。



「絶対、絶対、藤井のこと忘れるから」

「は?」

「だから、卒業までまた一緒に思い出作ろう藤井」



でもそれは、全部私が勝手に藤井なんかを好きになってしまったせいで、言ってしまえば藤井は何も悪くない。