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ガヤガヤと賑わう客席。

ステージ袖で出番を待つ私は、さっきから心臓がバクバクとうるさい。

いや、絶対に有り得ないけど、分かってるけど…わ…口から内蔵全部出そう。今はその例えが1番しっくり来る。



そう、ついに私達は文化祭当日を迎えた。
そして、今まさに演劇がラストシーンへと突入しようとしている。



「なに?夏乃緊張してるわけ?」


隣でもう出番を終えた呑気なうめが、私を見てクスクス笑うから、緊張は解れるどころか増していく。


「だって、ついにラストだよ?さっきからセリフが頭に入んないし、もう無理かもしれない」

「大丈夫よ〜、どう転んでも藤井がギャグにしてくれるって」

「バカ言わないで。藤井にそこまでの技術があったら悩んでないわよ」



0時の鐘が鳴り響き、「もう行かなくちゃ」と駆け出した私が落としたカボチャの靴。

そして、そんなカボチャの靴の持ち主を必死に探すと言う藤井のコメディシーンが終われば、


次はついにあの藤井らしからぬ甘いセリフを囁く、担任が待ちわびたラストシーンなのだ。