ーーーーーー高校二年生、大橋由美ーーーーーー。
私がトラックにぶつかった事故から四年の歳月が流れた、高校二年生の冬。
あの事故の後すぐに精密検査もしてもらったが、どこも異常は見当たらなかった。そして私は地元の学校を引っ越し、都内の学校に移り変わった。
「ねぇ、由美。ずっと光君を見てるけど、前の学校に好きな人はいなかったの?それとも、光君のことが好きになったの……?」
ーーーーーーひかる君………?
どこかで聞いたことがあるような名前が、私の脳内に反響する。
「ひ……か……る………」
しかし、しっかりと彼の名前が思い出せない。大切な記憶が、思い出せない。
「ねぇ、訊いてる。由美?好きなら、光君に声かけたらいいじゃん。」
「や、やめてよ。理沙。」
青井理沙は、私がこの高校に引っ越ししてきて、一番最初に出来た親友。
小柄な体型に、黒くて長い髪の毛を二つ結びにしている。ハキハキした性格から、光君にも告白したらしい。
「でも、理沙がフラれたんだから、私は無理だよ。」
笑いながらそう言うと、
「でも、俺には好きな人がいる。だから、その人がもう一度、告白するまでずっと待ってるんだってさ。もしかしたら、由美のことかもよ。ちなみに光君も、この学校に引っ越しして来たんだよ。」
「えっ!」
ーーーーーードクン!
何か大切なことを忘れている私の思い出が、一瞬、思い出しそうになった。