「でも、最後の思い出に俺と一緒の物を由美に渡したいんだ。」
「えっ!」
彼は白い歯を見せて笑って、ポケットから赤い手袋を私に渡した。
「ひーちゃんと、同じ色の手袋………」
「そう、俺たちはこれでどこにいても一緒だ。」
そう言って彼は、同じ色の赤い手袋で私の白い手をぎゅっと握った。
空から雪が降る、冬の寒い季節。かじかんだ私の小さな白い手を、彼が温めてくれる。
「じゃあな、由美。俺の名前、忘れんなよ。」
そう言って彼は、私の前から去った。
「………」
私は、泣いていた。彼からもらった赤い手袋をぎゅっと握りしめ、涙を流していた。
「ま、待って。」
数秒後。私は涙を拭って、彼の後を慌てて追った。
プーーーーーーー!
「えっ!」
道路に飛び出すと、横からトラックが私に迫っていた。甲高いクラクションの音が静かな冬の夜の街に響き渡り、トラックのコンライトが私の体を激しく照らした。
ーーーーーーズドンーーーーーー!