日差しが本格的に夏の熱線に変わり始める頃、今日もまた、うなだれて息を切らせながら坂を上る生徒たちに紛れて一人、道の端にあるガードレールに寄りかかる少女がいた。

少し茶色がかかった肩にかかるくらいの髪に眼鏡をかけた少女は両手を曲げて肘までガードレールにのせ、ぼんやりと景色を眺めていた。


「も~り~かっ!」

ばんっ!と元気の良い少女が、ガードレールに寄りかかっていた少女の背中を叩いた。
叩かれた少女は驚いて「うわっ」と声をあげた。

「あぁ、早苗かびっくりした…。」

少女は胸を指で抑えて心底ホッとしたように振り反る。

「また、ボ~ッと山を眺めていたの?」

あきれたように早苗は言った。 

「だって、この坂道キツいんだもの。少し休憩したくなるよ。」

「あのねぇ、山を眺めて休憩って何処の平安貴族よ!!」

「月の夜の帰り道は