教室の横にある空き教室について、持ってた旗をゆっくりと下ろす。


先輩とは名前を1度呼ばれただけでそれからは無言だったけど、でも如月先輩のちゃんとがっしりした背中を見つめてるだけで幸せで。


先輩と同じものをずっと持っていただけで、今まで我慢してた全部が報われた気がした。


今日は『先輩と旗記念日』だ。



「明日の放課後、集まりがあるから」


「あ、は、はいっ」


私、今までどうやって先輩と接していたんだろう。


「…それ」


「え?」


先輩がボソッと言ったのを私は聞き逃さなかった。


「いつまでやってんの」


「へ?」


「いや、なんでもない。変だなお前」

先輩は耳の後ろをかきながらそう言った。


「えっ、」


変?
変って言った?


「じゃあ、また明日」


教室のドアの方へスタスタと向かう先輩。


「あ、は、はいっ!!また明日っ!!」


慌ててとっさにそう挨拶をした時は、もう如月先輩の背中は見えなくなっていて。


けど。


『じゃあ、また明日』


先輩と私の間に、はじめて『また』ができた。『明日』ができた。


それだけですごく嬉しくて泣きそうになって。


「ズルいなぁ」


私はまた、先輩を好きになる。