こっち向いて笑って、先輩!



一緒に歩いた帰り道も、


放課後2人きりで過ごした教室も、


お揃いの手袋も、


初めて、触れ合った肌の感触も、



茜のお陰で楽しかったことばかりで。



なのに、ありがとう、そんな言葉1つも言えないまま、俺は大切な子を失ってしまった。自分がどう見られているのかばかり気にしていたせいで、スルリと離された手に、気づかなかった。


茜は、ずっと辛い思いを我慢していたのに。



『茜、今までありがとう』

『茜、今までごめん』


それが言えなかったことが、ずっと俺の中にあった後悔で。


人を好きになる資格なんてない。


高校に入っても、茜との失敗を引きずって、そう思って過ごしていたし、実際、どの子にも興味を持たなかった。


『如月先輩、ずっとずっと好きでした!もしよかったら、付き合ってください!』


高校3年の春、来原に告白されるまでは。