「あっ、ま、真壁くん。お、お疲れ〜」
どうしよう。あんな会話を交わしたせいで気まずい。彼の顔がちゃんと見られないや。
「できればさ、今まで通り普通にしてほしい」
「えっ、あ、うん。ごめんね、まだ嘘みたいで。びっくりしちゃって……」
「真壁」
へ?
大好きな声が後ろから聞こえたと思ったら、フッと昨日嗅いだばかりの柔軟剤の香りが鼻をかすめた。
「悪い。話してるのに。来原に用があるんだけど、いいかな」
え?わ、私?!
隣に立った如月先輩の顔を横目で確認すると、安定してカッコいい横顔がまっすぐ真壁くんを見ていた。
どうして私に用なんて。
あっ、まさか先輩、昨日のあの事件のこと、後から思いだしてじわじわと怒りが?!
それで、私に改めて口止めする気じゃ!