「おーい、なんだー?喧嘩か?」


流星が荒くなった息を整えていると、ドアから担任の声がした。


「……いえ、なんでもないっす」


流星がドアに向かってそういうと担任は「早く寝ろー」と言って俺らの部屋を通り過ぎた。


「必死だったら、誰にも渡したくねーって思ってるんなら、もっと、必死だって顔、桃ちゃんに見せろよ。それで幻滅する女なの。お前が好きになった女の子は」


「……っ、」


自分の間違いはわかってるつもりで、もう同じ間違いは二度としないと言い聞かせながら来原にも『言いたいことはちゃんと言え』なんて説教じみたことを言って。


結局一番弱くてできていないのは俺の方で。


今までそばでずっと黙って見守っていてくれた流星に、初めてぶつけられて、痛いほどわかった。


俺は一人じゃない。


来原が俺を選んでくれなかったら、


大切だと思った人が、スルリと手を離して消えちゃったら、


そう思うと怖くてなにも言えなくなっていた。


けど、今は、ちゃんとわかる。