「ヨウちゃん、行くわよ」

はーい、と初々しい返事をする、少女の手を引いて保育園を後にする。

大きなリボンのついたゴムで束ねたサラサラの髪。
パッチリとした二重の目。
ほんのりと赤いぷっくりとした頬。
笑うとひっそりと見える綺麗に並ぶ白い歯。

幼きにして整った顔立ちをした、可愛らしい少女。

言うまでもない、これが私の娘

ヨウちゃんだ。


ヨウちゃんは誰にでも優しく、誰からも求められる。

ヨウちゃんが歩けばおば様達が群がり、「いつも可愛いね」「ヨウちゃん、おかえり」「大きくなったら絶対美人さんになるわ」と
当たり前のことを口々にし、去って行く。

近所の人でヨウちゃんを知らないものは誰もいない。
ヨウちゃんはアイドルなのだ。


だけどもある日、このヨウちゃんの事を知らない者が現れた。

最近、近所に引っ越してきた子連れである。