私は思わず緩みそうになる顔をあわてて引き締めながら席を立つ。
「さやかちゃん。ごめんね!またあとで」
「え?ちょ、凛ー!」
不満そうに声をあげるさやかちゃんを背に、廊下に出て隆一くんの後を追った。
私が小走りで追いついた後も、彼はこちらを見ることもなくどんどん歩いていく。
だけど歩くペースはいつもよりゆっくりだった。
「…えへへ」
あ、思わずニヤけが…。
口元を手で押さえてからちらっと隣を見上げると隆一くんと目が合った。
目が合ったことにまたうれしくなって「ふはは」と笑ってしまうと、隆一くんの手が伸びてきて額にパチンとデコピンされた。
「いったァ!」
もう、時々こういうことするんだからこの人はー…。
あんまり話さない私の彼氏、蕪木隆一くん。
そりゃあ、私も最初は無口すぎることに戸惑ったけど、こんな風に時折見せる彼の表情があるだけで嬉しいのだ。



