「由樹。貴方、何を考えているの? お祖父さまの申し出を受けるつもりではないでしょうね!?」

詩乃が怒鳴りこんできたのは、総代と話をした数日後だった。

「詩乃、部外者が首を突っ込んでいい話ではない」

「由樹……」

「仕事に穴を開けてまで押し掛けてきて訊ねる話でもないだろう」

「でも!」

「詮索は無用だ。さあ、仕事に戻って」

「……わかったわ」

詩乃は呆気にとらわれたのか、肩を落として引き下がった。

室を出ていく後ろ姿に妙に哀愁が漂っていた。

「会長代行、良かったんですか? あんなにきつく」

芹沢は俺が詩乃を突き放したのが余程、意外だったのか、上目遣いで訊ねてきた。

「言ったとおりだ。人事と会社の機密事項に関わることは、例え身内でも漏らせない話だ。……それに、詩乃には特に話せない」