就任当初は、会長代行を色眼鏡でしか見ていなかった各部署の課長や部長も会社幹部たちまでもが。

常務と専務を除いては。

会長代行の秘書に抜擢された時、「こんなに若く頼りない人に会長代行が務まるのかしら」と思ったのに。

今、会長代行は結城コンツェルンの核。

社全体の渦の中心で社の全てを把握し、動かしている。

療養している会長は未だに、復帰のメドさえつかないと聞いている。

総代は表向き、結城コンツェルンを牛耳っていることにはなっているが、実質的には隠居状態。

たまに顔を出す相談役程度だ。

重役人事の変更が噂されているのは、当然のことかもしれない。

次は自分が重役になれるかもしれないと思っている社員は1人2人ではないに違いない。

たかが秘書の自分にも、察しがつく。

会長代行は不安ではないのだろうか、恐くはないのだろうか。