「芹沢、今日は定時であがっていい」

朝のスケジュール確認の際、会長代行はそう告げた。

「祖父……総代とプライベートで会うことになった。定時以降のスケジュールは特に急ぎのモノも、重要なモノもなかった。こちらで、後日に調整しておいた」

会長代行がサッとA4サイズのメモを差し出した。

「確認を頼む」

「承知いたしました」

珍しく定時で帰れるーー嬉しいはずなのに、何故か気持ちが浮かない。

総代が会長代行をわざわざプライベートでと改まって呼び出すのは珍しい。

いつも突然で強引に都合もお構い無し、スケジュールさえ無視して、自分の要件を押しつけてくる人だ。

いったいどんな話をするのだろう、気になって胸が疼いた。

「たまにはアフター6を自由に過ごすのもいいだろう」

会長代行がわたしの反応を窺っているのを感じて、わたしはじっと会長代行を見つめた。