結城コンツェルンは、結城当主が代々会長を担ってきた総合商社だ。

会長である父が心筋梗塞で緊急入院し、会長代行として由樹が抜擢された。

兄が2人もいて何故、由樹が会長代行に借り出されなければならないのか?

猛反対したが、父の決定は覆らなかった。

総代をしている祖父が直々に、由樹を会長代行に推したのだと。

家業に関わることは、私には許されない。

私の意見は聞き入れてもらえない。

それが結城では当然のことなのだと思い知らされた。

女は会社のことに口を出すな、兄たちのあからさまな態度に苛つくこともある。

貴方たちがしっかりしないから、由樹が奮闘しているのよと、苦言を吐いてやりたいと思いながら、私はいつも言葉を飲み込む。

由樹が私の立場を考えて、敢えて何も言わずに耐えているのを知っているからだ。

由樹を守ると思いながら、守られているのは私の方だとつくづく思う。