会長代行は私の方に体を向け、胸に当てた手を握りしめた。


「おい、もう少し横になれ。詩乃さんの件はあんたも追々、理解できるだろうよ」


「芹沢……結城家の事情は色々複雑だ。過去にも、今も……元、16時前に必ず知らせろよ」


私に向けられた会長代行の冷え切った瞳が、胸をギュッと締めつける。


元さんに向ける瞳は穏やかなのに……何故? 納得がいかなかった。


詩乃さんは会長代行にとって、ただお姉さんという存在ではない?


端から見たら、あんなに仲のいい姉と弟なのに?


結城家の事情が複雑……どういう意味なんだろう?


会長代行が何を考えているのか、わからなくなる。


いつも颯爽としている会長代行が内にどんな思いを秘めているのか、私は頭の中に疑問が渦巻いて仕方なかった。