「ねぇ、聞いた?3組の華川さん、昨日の放課後ついに薫くんに告ったんだって!」
朝、登校してきて最初に耳にしたのは、何やら騒がしい女子達の噂話だった。
それを聞くつもりはなかったけど、『薫くん』という言葉に反応してつい聞いてしまう自分が憎い。
間宮薫。クラスで浮いてしまうくらい整った顔立ちで、「学年一モテ男」……らしい。
そして昨日、学年一の美少女の華川美咲さんが、その薫くんに告白すると、クラスで話題になっていた。
「さすがの薫くんも華川さんには落ちたでしょー」
「それがさー振られたらしいんだよね。華川さんが涙目で帰ってきたとこ見た子がいるらしいよ」
「ウソ、私てっきり薫くんの好きな人って華川さんかと思ってたんだけど!」
「そう思われても仕方ないでしょ。クラスの可愛い子みーんな薫くんに告白して振られてんだから。」
そう。薫くんは、数え切れないほどの告白をすべて断っている。
「好きな人がいるから」
薫くんの告白の返事は、いつもその一言。
「もしかしたら自分ではないか」
そう勘違いして振られた子があまりにも多くて、最近は他校の子ではないかという説もある。

