唯少女論 第4話 「胸の高鳴りは消えない」わもか


 太陽が肌を焦がす、8月下旬。



真っ青な空に真っ白な雲。



ただ、上を向くひまわり。



打ち捨てられた自転車。



「わもかちゃん!」



海を渡る大きな入道雲。



そっと忍び寄る、雨の気配。



「……アタシと付き合ってください!」



夏休みが終わるまででいいから。



そう付け足された彼女の告白は、とてもうれしかったのに私をひどく混乱させた。



曖昧に返事ができないまま、私達の前にシャルが帰ってきた。



何もなかったように振る舞いながらの帰り道で、



一人だけ方向の違う彼女とわかれてから私はシャルに全てを打ち明けた。



「私は別に、気にしないよ」



とシャルは笑う。



「だって、そうなるだろうと思っててさ」



そういう気遣いのよさはすごいけど、ちょっと——



「……感謝してるかも」



「ん? わもかちゃん、何?」



思わず口から出た言葉に、浴衣を着せてもらっている唯理さんがたずねた。



「ううん。何でもない」



慌てて言うと私に浴衣を着せてくれていたお姉さんが口元を押さえて微笑んだ。



「仲がいいのね。うらやましい」



「……あ、ありがとうございます。でも私達、友達になって1ヶ月くらいしか経ってなくて」



「時間なんて関係ないよ。長く一緒にいてもケンカはするだろうし」



小声でそっと言った私にそのお姉さんは帯を巻き付ける。



「私の友達二人がね、高校からの友達なのに大ゲンカして、でも仲直りして。今でも一緒に住んでるの」



仲がいいのは時間なんて関係なく、いいことだよ。



お姉さんは長い黒髪を揺らしながら私の帯を整えていく。