「唯理さん! 見て!」



目を輝かせてわもかちゃんは言った。



「パレード! 来ました!」



笑顔で立ち上がる彼女につられてアタシも立ち上がる。



「綺麗……」



ゆったりと少しずつ色とりどりのイルミネーションをまとったフロートがアタシ達の前を通り過ぎていく。



光と音の嵐に飲み込まれたアタシ達はその非現実的な光景を全身で受け止めることしかできなかった。



それは、声にならないくらいの感動だった。



まるで眩暈《めまい》のような、頭がくらくらしそうな世界の中で、彼女の手がアタシの手に触れる。



目を見なくても、言葉を交わさなくても、伝わる温もりをもっと知りたくて、アタシ達は指を絡ませる。



夢のような世界の中にある、たった一つの現実がその先にあった。



アタシの隣に、彼女がいた。



ずっとそばにいたいと、離れたくないと願いを込めて、彼女の手を握る。



その届かない心の叫びが聞こえたかのように、彼女はその手を握り返した。



彼女はきらびやかなイルミネーションに照らされた顔をアタシに向けて微笑んだ。



言葉のいらない世界、音の響かない時間。



アタシはきっとこの光景を思い出す。



きっと忘れない。



つないだ手から伝わる温かさ。



他人の体温がこんなにも温かいんだと知らなかった。



「わもかちゃん、あのね……!」



アタシの声は、届くだろうか。



「今度はお祭りに行こうよ!」



これほどまでに近くて、けれど遠くに行ってしまいそうな彼女の心に。



「浴衣着て……! それからかき氷食べて……! それから花火見て……!」



「はい! 行きましょう!」



その笑顔は、アタシの思いを知っているのかと勘違いしてしまう。



「わもかちゃん!」



「はい!」



「……アタシと付き合ってください!」



こんなにもアタシのことを理解してくれるヒトはいないと、永遠に報われることのない恋に身を焦がしている。



「……はい。お願いします」



その胸の高鳴りは消えない。