「だから、——唯理さんが悩んでいたら一緒に悩みたいです」



それはアタシも思っていた。



彼女が悩んでいたらそれを理解して一緒に悩みたい。



アタシもそう思っていたのに、彼女はたった一人で悩んでこれからのことに結論を出した。



あの瞬間、アタシの心が潰れた音がした。



一緒に悩みたいと、ずっと一緒にいたいと伝える時間もなかった。



「……アタシも、わもかちゃんが悩んでいた時に一緒に悩みたかったよ?」



「え……?」



「わもかちゃんの力になれるかはわからなくても、一緒に悩んであげたかった。アタシもわもかちゃんのこともっと知りたいよ……」



涙を流すなんて柄でもない。



それでも、涙が一粒だけ、こぼれた。



「唯理さん、ごめんなさい……」



そっと涙を拭いてくれるわもかちゃんのハンカチは、彼女の匂いがした。



「だって、……ウチはお父さんいなくて、あんな母親しかいないでしょう? それが何だか恥ずかしくて……」



「……アタシの家も同じだよ。両親いるけど、アタシのすることには無関心だし」



「……私達、やっぱり似てるんだね。唯理さんも、——寂しいんだね」



彼女の言葉が、アタシの中で弾けた。



今まで言い表せずにいた思いが、彼女の言葉によってアタシの中で形を成していく。



——ああ、アタシは寂しかったんだ。



「わもかちゃん。……アタシ、寂しいんだね」



自分でも理解できていなかった。



だから、わもかちゃんのことが気になっていたんだ。



同じような寂しさをたたえた彼女の表情に安らぎと仲間意識を感じて、近付きたいとそばにいてあげたいと思うことは自然だった。



「私がそばにいます。唯理さんが寂しい時、辛い時は隣で抱きしめてあげます」



「わもかちゃん……」



今まで手を伸ばせば届くはずの距離を、アタシは越えたかった。



彼女の全部が、知りたいと思った。



「あのね、アタシ……アタシ、わもかちゃんと一緒にいたい。だから——」



突然の歓声にアタシは言葉を飲み込んだ。



アタシ達の視線の先から少しずつ光が、極彩色の洪水のようにゆっくりと軽やかなリズムを響かせて現れた。