「っ、いや、別に見てただけだし。」


急いで戻そうとすると、相川が腕をあげてわたしの届かない位置へと持っていく。


「あ、ねえ!返してってば!」


すると、相川は何も言わずにそのままレジへとまっしぐら。


「え、相川ってそういうの好きだったの…。」


意外さに固まっていると、買ったばかりのクマさんの入った袋を、ん!と胸に押し付けられた。


「へ?」


「お前の…誕生日、何もあげれなかったから。」


照れ臭いのか視線を合わせずに相川は言う。


「こんなんで…わりい。」


「えっ…。」



そう。


わたしの誕生日は、相川と白石さんの付き合った日。つまり、一年記念日だった。


おめでとう!って言われた時は嬉しかったけど、白石さんに1日相川を独占されて…正直辛かった。


誕生日くらいは…一緒にいてほしかったな…なんてね。


「だ、ダメだよ…白石さん、」


「柚は今は関係ねーの。俺があげたいからあげんの。それじゃあ、ダメか?」


「っ……。」


そんなの、反則だよ。


上目遣いしないでよ。私の目線に合わせてしゃがんでくれる、鈍感でなんにも気づいていないあんたを…もっと好きになっちゃうじゃん。


「わ、わかったよ…相川、ありがとう!」


そう言って小さく笑って袋を抱きしめれば、心なしか相川の顔が赤くなったような気がした。


「熱?」

「ば、バカ!ちげえよ!いくぞ。」


なんて、少しだけ不機嫌な相川でした。